2013/11/26

BLUE TRAIN ブルー トレイン / John Coltrane ジョン コルトレーン _ ブルース2曲を演ってみた

 ある曲をコピー、つまりそのミュージシャンの演奏を真似するためには、まずレコードをカセットテープにダビングします。
 そして、何度も何度もカセットプレーヤーの巻き戻しボタンをキュルっと押して、対象のフレーズを繰り返し流します。
 そうしながら楽器で音を探り当て、行きつ戻りつ1曲通せるようになるまで聴いては演り、演っては聴く。

 楽器がギターである場合は、どのポジションで演っているかは想像するしかありません。怪しい音楽専門店でブートビデオを買って観て初めて「そのポジションだったのか」とか「オープンチューニングじゃねーか」とか分かる。


 これ30年前の話。



 さて、最近は。

 スマホでAmazonからOmnibookという特定のミュージシャンの演奏を楽譜化した本をポチッと購入。在庫があれば翌々日ぐらいに配送されて早速開封。
 前日ダウンロードしておいたmimiCopyというアプリに演りたい曲を読み込ませて、70%の速度で再生(も少しゆっくり聞きたいときは50%で再生)。
 楽譜見ながら音聴きながら、くりかえし演ってみる。


 技術的な進歩は物凄いですよね。

 今回はこの「最近の方法」で演ってみたことについてのお話しです。



 まずはこちらから。

BLUE TRAIN
1. Blue Train     :1957.9.15
2. Moment's Notice     :1957.9.15
3. Locomotion     :1957.9.15
4. I'm Old Fashioned     :1957.9.15
5. Lazy Bird     :1957.9.15
Lee Morgan (tp) , Curtis Fuller (tb) , John Coltrane (ts) , Kenny Drew (p) , Paul Chambers (b) , Phily Joe Jones (ds)

 コルトレーンはまず音がイイ、ぷりっとした腰のある音。
 憧れるなぁ、こういう音。
 多少は、マイク性能やミキシング技術、イコライジングなどの組み合わせで作られた音という部分もあるかもしれませんが、基本的には変わらないのではないかと思います。
 管楽器は、レコーディングは元より、ライブでもマイクを通して演奏することがほとんどなので、プロの実音を生音で聴いてみたいです。
 やはり、管楽器は指先のテクニックより前に「音」ですよね。

 そして、シーツオブサウンズの原型ともいえる、五線譜の上の方のはみ出た辺りを多用する8分音符フレーズ。
 リーモーガンのメロディアスなアドリブとは対照的に、スケールの上下を多用したアドリブなんだけど、ヘンテコで病み付きになるんですよね。
 このスタイルは、50年代の他のサックスプレーヤーには見られないものだと思いますが、どうなんでしょう?


 このアルバムは、プレスティッジ契約中なのにブルーノートから発表されるという特例的なもので、プレスティッジでのセッション然とした録音とは違い、しっかり準備して取り組んだと思われるものとなっています。フロント3管という構成も特徴的ですよね。
 オリジナル4曲中2曲はブルースですが、ロコモーションはブルース形式に8小節のバースを付け加えたものだし、モメンツノーティスとレイジーバードはコード進行を少し変則的にしているなど、作曲者としてもヘンテコぶりを発揮させています。
 そして、唯一のスタンダード曲アイムオールドファッションド。マイルスコンボでは滅多に演らせてもらえなかったバラードを最高のフレーズで盛り上げます。

 ジャケットデザインは中途半端ですが、内容は聴きどころ満載。当然名盤として今も輝き続けています。





 さて、ここからが今回の本題。

 コルトレーンは、どんなことを考えてブルースを演っているのか。
 このアルバムの中で「JOHN COLTRANE OMNIBOOK」に載っているブルースを2曲を演ってみることで、頭の中を覗いて見ようと思います。




 まずはタイトル曲のBLUE TRAIN。
 テナーサックスではFのブルースです。
 ちなみにコンサートキー(移調楽器のキーに対する実音のキー)はE♭。
 コード進行はFブルースですのでこんな感じですね。

|F    |F    |F    |F    |
|B    |B    |F    |F    |
|C    |C    |F    |F    |



 この曲のアドリブで特徴的だと思われたのは以下の通り。

① 全てのコードにセヴンスをつける
  これはジャズの常套句。
  セヴンスをつけるということは、それぞれのコードスケールの7thの音をフラットさせるということです、念のため。
② 基本的にはコードにスケールをあてはめて演っている
③ F7の場合はフレーズにより5th又は9thをシャープさせ、B♭7の場合は11thをシャープさせます。
  何故かFとB♭では違う音をシャープさせたりしています、なんでだ?
④ 2小節目は気が向くとF7ではなく B♭7で演っています。
⑤ 9,10小節目のC7は省略してF7として演っています。





 ということで、アドリブはこんなコード進行にスケールをあてはめて演ってるようです。

|F7(#5)(#9) |F7(#5)(#9) or B♭7|F7(#5)(#9) |F7(#5)(#9) |
|B♭7(#11) |B♭7(#11)     |F7(#5)(#9) |F7(#5)(#9) |
|F7(#5)(#9) |F7(#5)(#9)     |F7(#5)(#9) |F7(#5)(#9) |






 そしてお次はLOCOMOTION。
 テナーサックスではCのブルースですが、12小節を2回繰り返した後にオマケの8小節(B♭からGまで半音づつ下がっていく進行ですね)をくっ付けています。コルトレーン作のちょっとひねったブルースです。

 単純に書けばこんなコード進行です。

|C    |C    |C    |C    |
|F    |F    |C    |C    |
|Dm7  |G7   |C    |C    |

|C    |C    |C    |C    |
|F    |F    |C    |C    |
|Dm7  |G7   |C    |C    |


|B♭   |B♭   |A    |A    |
|A♭   |A♭   |G    |G    |





 そしてこの曲で特徴的な事は以下の通り。

① 全てのコードにセヴンスをつける
  BLUE TRAIN同様、7thをフラット。
② 基本的にはコードにスケールをあてはめて演っている
  これもBLUE TRAIN同様です。
  まあ、これはコルトレーンに限らず基本中の基本ということでしょうか。
③ 9,10小節目のDm7~G7は、BLUE TRAINの時のように省略してCメジャースケールで演るんじゃなくて、Dマイナースケールをチラ見せしています(あくまでチラ見せ程度ですが)。
④ Cが続くところに、まれにC#をかませる
  こういうやり方があるんですね、おもしろい。




 で、アドリブコード進行はこんな感じでしょうか。

|C7    |C7    |C7    |C7    |
|F7    |F7    |C7    |C7    |
|Dm7   |G7    |C7    |C7    |

|C7    |C7    |C7    |C7    |
|F7    |F7    |C7    |C7    |
|Dm7   |G7    |C7    |C7    |

|B♭7   |B♭7   |A7    |A7    |
|A♭7   |A♭7   |G7    |G7    |





コルトレーンがブルースを演る時に何を考えていたか(まとめ)
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① 全てのコードにセヴンスをつける
② 基本的にはコードにスケールをあてはめて演っている
③ 9,10小節目は、省略して主キーを当てはめる
  又は、11小節目を含めてⅡ-Ⅴ-Ⅰと考えてⅡをチラ見せする
④ 同じコードが続く場合は、そのコードの#させたコードをちょっとかませてみる
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 いかがでしょうか。
 詳しい方はもっと気付いていることがあると思いますが、今の僕の知識ではこの程度のまとめになります。


 これまで「JOHN COLTRANE OMNIBOOK」の中の5曲を演ってみたことになります。
 これからは5曲で学んだことを組み入れて、引き続きアドリブ上達を目指します。
 めざせ、未熟な頃のコルトレーン!






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